オーラヴル・アルナルズ&アリス=紗良・オット『Nocturne In G Minor』 Next Plus SongYoung Juvenile Youth『Animation』

HIS
『500マイル』

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 街を離れる時の心細い心情をこれほど的確に表現した歌を他に知らない。こんなに能天気な僕でさえ心細さを感じるのだから、繊細な人はなおさらだろう。原曲はHedy Westの500miles。その後ピーター・ポール&マリーが歌ったバージョンが最も有名だと思う。アレンジ的にもHISのバージョンはしっとりと切なく歌うPPMのカバーだといっていいだろう。が、こうして日本語に意訳、というよりも全く別モノともいえる歌詞が付されることで、心の奥をギュッと握りつぶすような名曲になったと僕は思う。だがやはり500マイルは500マイルであって、800キロメートルとは歌われない。それは500マイルというのが物理的な距離なのではなく、象徴としてのひとつの単位だからなのだろう。500マイルというのをアメリカ人がどのようなものとして感じ取っているのか正確には理解できるわけもないのだが、つい先日観た映画の中で500マイルについて語っていたセリフがあったので紹介したい。離婚によって限られた週末にしか息子に会えない父親が、大学進学について相談されて「500マイルまでなら日帰りでいつだって会いに行けるぞ。でも学費のことを考えて(自宅のある)テキサスの大学にするのが良い」と答える。息子に会いたくて会いたくて愛して止まない父親が車で日帰りで行けるぞと行っているのが500マイルだ。いや、往復で1600キロなので日帰りはとても無理だろうとは思うが、そこまでならなんとか会いに行くという。だが、それ以上離れるのなら、愛する父親でもそうそう会いに行くことは出来ないと、そういう距離感なのだろうと思った。うーん、そうなのか。息子に会うためならどこまでも行くぞとは思うが、やはり500マイルというのは結構な壁なんだと思った。HISとは細野晴臣、忌野清志郎、坂本冬美のイニシャルを並べたユニット名。オリジナル曲はもちろん、ほとんど原曲を留めていないようなカバーも含めたとてもユニークなアルバムを発表したのだが、これはもっとも原曲に(これでも)近いシンプルなカバー。今でも時々聴く、名盤の中の1曲である。
(2015.6.13) (レビュアー:大島栄二)
 


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