Tropics『Rapture』
SAYCET『MIRAGES』
米須昌代
『やわらかな風に吹かれて』
ツイート
大阪で活動する彼女は沖縄出身の両親の元で育ったそうで、だからなのか、歌を聴いて沖縄の何かを感じてしまう。そんなことを書いている僕は沖縄に行ったことも無いのだけれど、沖縄っぽいなにかというものは確かに存在していて、それに触れればやはり沖縄を感じずにはいられない。日本にはそういう地域を感じるなにかというものがもうあまり残されていないように思う。交通が発達して人の往来がスピーディーになることで、地域性というものは徐々に失われていくのだろうか。それは福音のようでもあり、同時に哀しい喪失のようでもある。画一的な駅前風景に暮らしテレビの芸人の言葉で育てば地域の特性など吹き飛んでいくのも道理で、今後ネットが地域の壁をさらに取り払い、人々はどんどん均質になっていくのだろうかと、ふと思う。しかしSNSで沖縄に住む友人の暮らしを垣間見るとき、凍えそうなこちらの冬からは想像つかないようなTシャツの日常があったりして、それは超えようの無い空間そのものの違いでもあるよなあと思ったりすることもある。そんなことを考えながら米須昌代の弾き語る歌を聴いていると、頭で考えるように単純に人は均質になどならないような気分にもなってくる。むしろ都会で自分の時計には25分までしかないのではないかと思うような忙しい気分で暮らしている何かが日本全体のデフォルトになるのではなく、何故かゆったりとした気分にさせてくれる沖縄の風土の、なんくるないさ〜的な何かが狭い国土を包んでくれればいいのにと、勝手なことを考えてしまうのであった。いや、お前は何も知らないだろうと沖縄の人からは怒られそうで怖いのだが。
(2015.4.2)
(レビュアー:大島栄二)
このレビューは、公開されている音源や映像を当サイトが独自に視聴し作成しているものです。アーチストの確認を受けているものではありませんので、予めご了承ください。万一アーチスト本人がご覧になり、表現などについて問題があると思われる場合は、当サイトインフォメーション宛てに
メール
をいただければ、修正及び削除など対応いたします。