KANA-BOON『生きてゆく』
下問晶子『サンバディラ』
尾崎豊
『I Love you』
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当時反抗する十代のアイコンとしてガラスを割ったりバイクを盗んだりという歌詞が過剰に喧伝され、10代のカリスマとして持ち上げられた尾崎豊。2枚目のアルバムで卒業を歌い、それは同時に20代になることで10代の何かとは決別して新たな道を模索しようとしていたのだと思う。だが歌うことが見つからずに苦悩する。だがそれは最初のヒットから沸き起こった期待と敷かれてしまった路線にフィットしようとした努力と、現実の自分との乖離に苦しんだ姿だったのではないだろうか。学校は卒業してしまえば関係なくなるし、卒業が難しければ退学届を出せばいい。だがカリスマとして持ち上げられたスターの座にはビジネスが伴い、無名だった頃からのスタッフと切り離されることで逃げ場を失う。孤独なアーチストにありがちな構図は、尾崎豊ひとりの特異なケースではなく、それに潰れていったアーチストの例は枚挙に暇がない。反抗するカリスマという尾崎に与えられたイメージとは違い、彼はこの代表曲のような普通のラブソングを歌いたかっただけなのではとふと思う。いじめられることなく学校に行き、普通に3年で卒業し、進学するなり就職するなりして平凡な暮らしをしながらガラガラのライブハウスでラブソングを歌う。多くのバンドマンが脱出したいと思うそんな状況にいることができたら、苦しむこともなかったのかもしれない。そう思うと、人の幸せはどこにあるのかわからないなと、複雑な気分になる。巡り合わせで大ステージに立ち歓声の中でラブソングを歌う、そんな彼の姿をずいぶん久しぶりに眺めながら。
(2015.1.3)
(レビュアー:大島栄二)
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