Artrandom『小さな恋の物語』
イヌガヨ『ロックンロール』
別野加奈
『濾過装置の悲しい仕組み』
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歌詞が小説のように紡がれていて、キャッチーなサビの繰り返しなどを排除した風景のような曲。それ故に、わかりにくい。ポップミュージックのクリエイターとしてならきっと落第なのだろう。だが、音楽性は今や多様化して、リスナーの興味も多岐に渡る。そういう中でしっかりと支持を得ているアンビエントミュージックをこの曲に感じる。環境音楽とも訳されるその音楽ジャンルは登場した70年代とは様相を変え、クールダウンさせるための音楽として立場を確立した90年代を経てさらに様々な音楽表現を内包している。インストの楽曲がほとんどで、AメロBメロサビサビダッシュのような明確な展開を意識させないことが多い。音だからリスナーは感性のみでその音の羅列を受入れるしかないのだが、もしかするとひとつひとつの音や、その音の連なりには意志があるのかもしれないとふと思う。それはイルカの鳴き声がきちんとしたコミュニケーションツールであるように、普通の人には意味がわからないだけで、ただ癒されていると感じている音の裏には、しっかりとした考えも哲学もあるようなイメージ。別野加奈の紡ぐ歌詞は、ポップのような展開がないだけで、よく汲み取ればそこに人の日常へのひとつの解釈がある。楽曲としてはかなり長い方に属する曲がさらに明確な展開もなく、だからリスナーは環境音楽のようにただその音に神経を委ねてみるものの、そこには声にならない声が何かを訴えているような、そんな切なさを感じるのだ。
(2014.12.8)
(レビュアー:大島栄二)
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