sukida dramas『Kansas』
ENTHRALLS『漂流』
くるり
『Liberty&Gravity』
ツイート
改めて、くるりという存在の異質さと真っ当さを際立てる曲だと思う。今でこそ、「東京」、「虹」、「ワンダーフォーゲル」、「ばらの花」、「Remember Me」など数多くの曲とメンバー変遷の中で都度、フォーマット・チェンジしてゆく中でも、その“流浪の佇まい”をして着実な支持をされてきたバンドとして既に15年目を越え、こうして続いている。若いバンドメンの方によく聞く。くるりのカバーをしようと思うと、京都特有のブルーズに根差したコード進行が多くて難しい、と。“わかりやすさ”というポップ・ソングの宿命に対して、くるりは、頑なにロック・バンドとしての意思を貫き、誰もが見向きもしないような辺境の、そして、細やかな花の囀り、天気の移ろい、感情の靡きにフォーカスをあててきた。この「Liberty&Gravity」はウィーンで書かれたという目まぐるしく展開の変わるプログレッシヴな曲。和的情緒と中東ポップスのミッシング・リンクを縫い、MV内では、現代舞踏と雑踏の足音に耳を澄ませ、オリエンタルな情緒を表前させる。しかし、そこで綴られる想いは「誰かのために、働くことの意義」だったりする。誰かの、ために働くことをリプレゼントする困難が今の時代にある中に、幾つもの印象深いフック、コーラスを入れながら、真正面から音楽が生きる探索を続ける。この曲からは、レディオヘッドも奥田民生もラヴィ・シャンカールも幾つもの声が聞こえる。それでも、くるりでしかない。彼ら自身のキャリアを重ねたゆえの新しいソウル・ミュージックとしての昂揚に、胸が打たれる。
(2014.9.2)
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
このレビューは、公開されている音源や映像を当サイトが独自に視聴し作成しているものです。アーチストの確認を受けているものではありませんので、予めご了承ください。万一アーチスト本人がご覧になり、表現などについて問題があると思われる場合は、当サイトインフォメーション宛てに
メール
をいただければ、修正及び削除など対応いたします。