悲しみの感情をもっともよく表現するのはピアノの音なんじゃないだろうかと思い込んでしまいたくなるような曲。歌が無ければアンビエントミュージックとして成立するだろう静寂のサウンドに、Naoの硬い空気を切り裂くようなボーカルが載ることで、不安感は増しているのではないだろうか。このバンドはCRACK IS ARTという芸術集団の音楽部門という少しばかりややこしい位置付けなのだそうだが、音楽そのものはそんなにややこしい感じもなくむしろスッキリとした表現でリスナーの心に突き刺さる。歌詞にある言葉だけを拾えば、昔の職業作詞家がアイドル歌手のアルバムの1曲として提供したようなシンプルな心象風景なのだが、2010年代の音楽に当てはめた場合にはこういう仕上がりになるんだなと、そういう意味でも時代を感じさせる不思議な楽曲だった。