サイプレス上野とロベルト吉野『サ上とロ吉~LIVE GOES ON』
Newton『Faster, Better, Stronger』
Benoit Pioulard
『Reliquary』
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中島みゆきは長年、ライヴで「時代」を歌わなかった。それは彼女の想いもあるのだろうがしかし、近ごろ行なわれたライヴ・ツアーで昔のようなフォーキーさではなく、ダイナミックなアレンジメントで「時代」を今の彼女の歌唱で届けていた。その「唄」を聞いた、感じた多くの人たちはおそらく、世代を越えて色んな感慨を持ったと思う。「唄」は良い思い出も、過去も、また、この現在、一人ひとりの日常に寄り添い、化学反応を起こす。あるときから音楽が聴けなくなった、という人はおそらく、音楽を聴く行為よりも目の前の現実に追い詰められているのだとも思う。このアメリカ・ポートランド在住のBENOIT PIOULARDが奏でる音楽は、濃霧の向こうに、色んな楽器や自然音、エレクトロニクスが既にノスタルジックに、過ぎ去ってしまったものかのように、ひずんだ音像に輪郭を与える。これは尤もらしい退行や逃避ではなく、つまりは、聴き手がそれぞれの想いをもって色をここにつけていけばいいことだという気もしないでもない。音楽を聴く気分じゃないことが増えても、何かの際に口笛を吹いてみたら、彼のような曲になっていることはあるのではと夢想すると、世界中の弧独は共帯しているという錯覚もおぼえる。
(2014.2.26)
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
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