ルルルルズ 『ぬかるみの世界』 Next Plus Song徳永憲 『悲しみの君臨』
Lillies and Remains
『I Survive』
 バウハウスの曲名と文学的な響きの良さから取ったバンド名、ゴシックなエクリチュールをベースに京都から07年にあらわれた彼らはポスト・パンク、ニューウェーヴ直系のサウンドと上品な頽廃と反語的な希望的な何かを求め、メンバーの変遷と艱難な時期を幾度も経てきた。それは都度の曲群やMVでも刻印されていたが、ただ、現在進行形の彼らはこのMVに見受けられるように、70年代のNYアンダーグラウンド・シーンへの目配せと、タイトなギター・リフ、カット・インされるメンバーそれぞれの静止画とエンドロールが雑多になったような瞬間を刻み、「私は生き延びる」と歌い、映画のクレジットのようにいつになく、含みのないKENTの心情を綴った英詩が流れてゆく。きっと、もう彼らの名前を知っている人たちは多くいるとしても、まだ、“なにも始まっていない”バンドとしてこの冷ややかな情熱を改めて知ってほしいと思う。そして、これから初めて彼らを知る人も尚更。少しずつ、或る景色を刷新してゆくための礼装を纏う儀式に添うだろうという前夜にあるという気がする。厳粛なモラリストだった時期から抜けて。
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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