石田洋介『水色桔梗は勇気の証』(selfreview)
2020年大河ドラマ「麒麟がくる」が始まった。
主人公は明智光秀。「本能寺の変で主君・織田信長を裏切った謀反人」という「悪名」を何百年と背負ってきた光秀の半生と彼の生きた戦国時代をこれまでとは異なる視点で切り取るドラマになるようだ。
そんな光秀が治めた土地のひとつ、京都府福知山。
この地では善政を敷いた名君として長く慕われてきた光秀のことを歌う曲がある。
「水色桔梗は勇気の証」石田洋介、作詞・曲・歌。
「水色桔梗」とは光秀の家紋のことだ。大河ドラマを機に明智光秀という人物の「謀反人」以外の姿…福智山城や明智藪を築き、民のためのまつりごとに砕身した光秀の姿と、彼が愛した福知山という土地を知ってほしい、そんな地元の方々の願いを受けて2019年春に作られた曲だ。ハードロックの強いビートや、研究家や地元の人々への丁寧な取材を受けて書かれた歌詞の向こうに、厳しい戦国の世を懸命に駆け抜けた、光秀の情熱的な、凛々しい姿が浮かんでくる。
「誠を貫け 信じたもののため」
ベースの太いサウンドが印象的な、キャッチーで耳に残るサビのフレーズに全てが詰まっている。それを伝えるのは熱さの中に哀しみを湛えた、どこまでも遠くまで届きそうな伸びやかな石田洋介の力強い声。聴き終わって心に残るのは耳を駆け巡った音の快感と疾走感。すっくと立つ、光秀の美しい背中。
光秀公を真っ向から讃えてはいるけれど、どこか寂しさも残る歌詞。世間とやらのイメージする裏切り者の顔と、丹波の民にとってはよき殿様、有能な君主である顔…歴史には、光と影、表と裏がある。そのことを一抹の哀しさを湛えて胸に響かせてくれる曲だ。
多くの方にこの曲が届き、これを機会に新しい明智光秀に出逢ってもらえることを願う。
(2020.1.21) (レビュアー:浦山純子(ファン))