Bamboo『サクタメの花』
【肩の力が抜けたナチュラルな表現が、魅力的にバンドを進化させている】
なんか突き抜けてるな、と思う。YouTubeのバンドを紹介するような表現には「破天荒ポップロックバンド」とあって、そんな破天荒じゃないよなと思ったし、ポップロックバンドというよりもポップバンドといった方がいいような軽やかさだよなあと思って、それがなんか違和感だったので、過去の曲もいろいろ聴いてみる。おおお、これはポップロックバンドというよりもむしろロックバンドだよなあと感じられる過去曲がぞろぞろと出てくる。ライブ動画もあって、そこにはパワフルに声を張り上げてシャウトするボーカルちなみの姿が映る。きっと、パワフルなボーカリストなのだ。パワフルであればそのパワフルさが武器になる。キュートなルックスのボーカリストがパワフルであればそのギャップがセールスポイントにもなる。そんなビジネスライクな考えなどしなくても、声が出るのだから力の限りに歌おうとするのは自然なことだ。パワフルな歌唱には迫力もともなうから、それに拍手を送るファンが出てくるのも当然のことだ。だが、それは自然で当たり前の延長線上にすぎないし、バンドに不可欠な、魅力に直結するのかというとそうではない。
この曲ではあらゆる意味で肩の力が抜けている。パワフルな歌唱というよりもナチュラルな歌唱で、演奏も力強いビートに底支えられている上にカラフルな上物を適度に添えることに成功している。イントロのギターのなんと軽やかで耳に残ることか。トータルに見て、ポップだ。この軽やかさを実現させているのも、パワフルに歌えて演奏できる力があるからで、なんというか、余裕がある。歌う力のない人であれば、このくらいの軽めな表現であっても汲々とする様が伺えるが、彼らの場合そういう必死さが見えない。だから、やはりパワフルであることは全く無駄ではないのだ。
彼らはこのMVを公開して数ヶ月後に『HONKIDA』という曲のMVを公開してて、その曲では演奏や歌唱といったパフォーマンスの点ではポップ感が前面に出ているものの、歌われている歌詞に一生懸命さが詰め込まれていて、ああ、彼らは根本的なところで真面目で全力で取り組む気質の人たちなんだなあと感じる。そのこと自体悪いわけではないが、その全力さで力を抜くことに取り組んでいくと、この曲に現れている良さがもっともっと彼らの表現の中心になっていって、多くの人たちを魅了していけるんじゃないかなあなんて勝手に考えてみたりする。
(2021.6.21) (レビュアー:大島栄二)
https://www.musipl.com/site/rv-02422/
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