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マッシュとアネモネ『マドワク』
【投げやりな感じなのに強い歌。そんなもの存在するはずないだろうと思うが、ここにある】

約2年前に彼らの曲『シーサイド』のレビューをして、その時に投げやりな感じをプラスの表現として評価した。投げやりな感じをプラスと評価する人はそんなに多くないと思ったし、彼らが活動を続けていく中でそれを否定して修正しようとするスタッフが現れるはずだから、そんなの無視して突き進め的なエールを送った。で、2年ほど。変わっていない。このMVには黄色のポンチョ(?)の軍団が出てくるし、雪が積もった森林までロケに行くとか、撮影にドローンが使われているとか、前作と比べたら制作スケールがかなり違っている。YouTubeのクレジット欄にはディレクターにアシスタントディレクターもいればスタイリストにアシスタントスタイリストまでいる。ドライバーも2人いるし。そういうのから想像するに、そこそこスタッフがすでについている現状だと思われる。それなのに、曲も歌い方も変わってない。いい意味でまったく変わってなくて、嬉しくなる。投げやりな感じの表現手法を否定されてもなくて、そのまま進化していて。この投げやりな感じなのに、歌の主体が真摯にこの世界に向き合っている様子が伝わってくる。ボーカルのもちこが前作とは違ってバシッとメイクをしてて、そのせいか以前よりも眼力が増している。だがそれ以上に歌が強くて、訴えかけてくる。投げやりな感じなのに強い歌。言葉にするとそんなもの存在するはずないだろうと思う。投げやりなのに真摯ってどういうことよと思う人も多かろう。だが、そんなありえなさそうな表現がここにある。聴いてみれば、何をいっているのかはきっと分かる。そういうものが存在するんだと。

(2021.6.14) (レビュアー:大島栄二)


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