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窪み『普遍』
【彼女にはどんな心の闇が秘められているのだろうか】

なんかすごいなこれ。なんかって何だよというツッコミが入ることを覚悟しつつも、なんかすごいとついつい言ってしまう。MVの映像はチープなアニメ、というか人形劇のようなしつらいで、ごていねいにも舞台に幕が下がったり、舞台の背景がチェンジしたり、客席に人が座ってたりしている。これを見てて、AI美空ひばりのようなのを思い出す。近くによるとAIなのがバレるから遠くからしか写さない的なアレ。そんないかがわしさというか、パチモノ感があって、絵としてのおどろおどろしさに満ちている。シンガーというよりも歌手という言葉が似合うし、全体的には昭和歌謡の雰囲気が漂う。そもそも窪みというアーチスト名はいったい何なんだ。それがすでにおどろおどろしい。歌い方も個性的で、こぶしを回すのにも似たグイグイとした押しの強さで迫ってくる。いったい誰なんだこの人は。

そう思ってwebサイトを見たりすると、本名は久保ひとみというそうだ。久保とひとみの最後がくっついてクボミで、それが窪みになったのか。確証はないけれど、多分そうだろう。レフティのガットギターで弾き語ると書いてある。このMVからはギターの弾き語りはまったく想像できないが、彼女の他の動画を見ると確かにギターを弾き語っている様子もうかがえる。彼女のチャンネルではないところに久留米でのライブの様子があって、博多弁ならではの不思議な言い回しを歌詞にした曲が歌われている。博多弁の不思議な歌を久留米で歌うのだから客のほとんどは大体わかるとは思うが、その不思議な部分を客席にシングアウトを要求するMCの様子が、ちょっと普通じゃない。とても明るく軽やかに客席とコミュニケーションしているのだが、顔の表情は笑み全開なのに眼が笑ってなくて、その状態からサビ(?)のところで凄むような歌い方に一瞬で移っていって、その転換がスムーズにできるのは、きっと笑み全開のように見える部分でも実際には凄むような圧に満ちているからなのだろう。

この曲が持つ圧力やライブ映像の圧力を感じると、半年ほど前に公開されている別曲のMV『秘密のワルツ』が表面的には静かでしっとりとした3拍子のバラードであっても、そこになにかのダークなものが含まれているのでは、隠されているのではと気になってしまう。それ以外にもどんな心の闇が秘められているのだろうかと気になってしまう。いや、そんなに言うほど闇ばかりではないんだろうけれども。ともかく、彼女のミニアルバムを全曲ちゃんと聴かなくちゃ。

(2021.5.28) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl