Bialystocks『Nevermore』
【盛り上がることには疲れたという時に、こういう音楽を聴きたい】
ポップミュージックって、基本的には明るく盛り上げるテイストに満ちているものだと思う。でもこれ、そんなに明るいテイストではないし、どちらかというとむしろ暗い影に包まれているような印象さえある。なのに、妙にポップだ。もしかすると僕が音楽について知らなすぎるだけで、暗い影に包まれているポップなんてたくさんあるのかもしれない。例えばポップスを歌うシンガーのアルバムに収録されている泣かせるバラード。それは暗い影に包まれたポップミュージックじゃないのかといわれれば、そりゃあそうなんだが、僕がここでいおうとしてるものとはちょっと違ってる。基本明るい性格の人にだって何かがうまくいかなくてむしゃくしゃした日というのはあって、そういう時に、いつも明るい人なのに今日はちょっと沈んでるねと、周囲の人は感じるだろう。だがそれは暗い影に包まれている人、なのではなくて、たまたまその日暗く落ち込んでるだけのこと。そうではなく、基本が明るい性格ではなくて、人生に沈んだオーラを身に纏っている人というのがいて、そういう感じの、ポップミュージック。かといってこのバンドのメンバーの性格がそうだといってるのではない。バンドが、生み出す音楽が、どういうわけかそんな感じだという印象。で、これがなんか心地良い。明るく盛り上がるのではなくて、じんわりと響くようなポップミュージック。盛り上がることには疲れたという時に、こういう音楽を聴きたい。3分を過ぎたあたりから曲調がにわかに変わり、4分くらいからはガッツを見せるぜ的なパワーを前面に出してくるのだが、かといってロックだぜ的なものとも違ってて、そこのフレーズが終わると、テンションはまた元に戻っていく。その過程が、胸の奥に熱いものを秘めていることを証明しつつも、熱いものを前面に出してしまうと自身が焼き焦げてしまうかのようにまた奥に奥にしまっていくようで、興味深い。誰もが持っているはずの熱い想いについて、表に出していくだけが素晴らしいんじゃないんだよと思いながら生きている人の、存在証明にもなり得るような、素敵な音楽に触れたような想いにさせられた。
(2021.5.20) (レビュアー:大島栄二)
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