プールと銃口『SUMMER KILLS ME』
【男男女女4人ボーカルバンドというのは初めて見た】
なんかこれスゴい。メイン男性ボーカルギターが歌ってるところにもうひとりの女性ギターがボーカルとしてクロスしてくるから、ああ、これは混声ツインボーカルバンドなんだなと思ってたら、ベースも歌い始めて、そしたらドラムも歌いだす。おいおいこれ4人とも同じくらいの比重で歌ってるよ。Twitterのプロフィール欄には「男男女女4人ボーカルバンド」と書いてある。ハードロックとかパンクバンドとかいう音楽性ジャンルから、ピアノロックバンドとかバイオリンロックバンドといった特定の楽器をプッシュしたジャンルまでいろいろあるけれど、「男男女女4人ボーカルバンド」というのは初めて見た、というか聴いた。よく考えたら昨今のアイドルバンドも48人くらいいるのが全員ちょっとずつ歌うというのがお決まりだし、それと似てるのかもな。でもそれにしてもあからさまにセンターとかいって特定のメンバーをメインボーカル的にしてるけど、このプールと銃口はメインボーカルが誰だという特定は難しい。4人の声質はそれぞれまったく違ってて、中には「自分はそんなに歌に自信ないんだよな」と思ってたメンバーもいただろうに、どういう方針なんだか全員が歌うということになり、開き直って歌いました、歌ったら意外に楽しいし、誰と較べて上手いとか下手だとかじゃなく、自分の声で100%を出し切れば良いんだ、的な感じなんじゃないかと思う。実際に4人の声の違い歌唱法の違いがそのまま出てて、その違いによって曲が単調になることを避けることに成功していて、聴いていて本当に心地良い。この曲自体もたたみかけるような仕上がりになっていて心地良いし、サウンド構成的にも無駄な音がひとつもなくて、それでいて4分ちょうどの曲にこれでもかと音が詰め込まれてて、音のシャワーに押し流されそうになる。ギターの音色作りもとてもシンプルなのに、他の楽器との組み合わせの相性なのか、ひとつひとつがクッキリと立っていて存在感が半端ない。わりと普通な若者4人みたいな風情で、アーチストアーチストとした重厚感などまるで出してないけれど、もしかすると本人自身も気がついていないくらいにすごいアーチストなんじゃないだろうかと思ってしまう。
(2021.4.8) (レビュアー:大島栄二)
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