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犬塚ヒカリ『PATAPURIKE』
【がらんとした空間にひとり立たされているよう】

淡々と展開していく曲が、進めば進むほど澄んだダークネスに包まれていく。得体の知れない恐怖に包囲される感覚に陥っていく。パタプリケという「古いおまじない」に願いを叶えてと託すのだが、そのパタプリケとは一体なんなのか。ググってみたけど出てこない。彼女のこの曲ばかりが検索結果として出てくるばかりで、だからそんなおまじないの言葉などこの曲の中以外には存在していないのだろう。その意味を知りたければ彼女自身に尋ねるしかない。それはめんどくさいし、仮に何らかの彼女なりの答えを聞いたとしても、答えを知ることに意味は無いのだろうし、曲への感じ方が変わるわけではない。この存在していないおまじないの言葉に頼るしかないところに、曲の主人公は追いつめられているのだろう。古いおまじないの言葉に頼るくらいしかもう手段が残ってなくて、頼ってみたところで何の解決にもつながらないと、そのことも既に知っているような無力感が曲全体を支配していて切ない。
この無力感というか絶望感というか恐怖感が、この曲そのものに由来しているのだろうか。それはそうだろう。しかし、この犬塚ヒカリというシンガーの声質そのものも大きいように思える。この曲自体は彼女のYouTubeチャンネルじゃないところにアップされているのだが、彼女のYouTubeチャンネルもあって、そこには過去のライブ映像や「歌ってみた」映像が公開されている。この曲が持っているような絶望感など特に無い曲なのに、犬塚ヒカリが歌うとがらんとした空間にひとり立たされているような雰囲気が漂い始める。とても不思議で魅力的な声だ。

(2021.3.25) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl