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METAFIVE『環境と心理』
【曖昧に留めることで意味を受け取る側の裁量に任せているような表現】

METAFIVEの新曲がデジタルでリリース。4年ぶりのリリースだとか。4年も特に活動がなければ普通はもはや解散したのかと思わるだろうし、僕も実際そう思ってたし、彼ら自身もそう思われているという自覚があったのか、この新曲MVを公開する10日ほど前に「METAFIVE. STILL ALIVE.」という短い動画を公開していた。バンド名のロゴというか文字がシンプルに躍動する、本人たちなど一切出てこない動画で、それでスティルアライブとかいわれてもなあと思っていたところの、この新曲だった。

最初に彼らが登場した時にはLEO今井のエネルギッシュなボーカルが前面に押し出されていて、だからそういうバンドユニットなのかなというイメージを持ったものの、その後の活動は必ずしもそうではなくて、高橋幸宏を中心に集まった音楽のエキスパートたちが心地良く楽しんでいるユニットという印象に変わっていった。この曲でも、それぞれのメンバーが自分色を押し出すことなく、むしろ個性を打ち消そうとしているのかと思うくらいの淡々とした歌を交代で載せている。そのことで、サウンドが強調されるように感じられて興味深い。

このMVは歌詞と相まって意味深な描写とメッセージを感じさせるものの、じゃあそのメッセージとは一体何なんだと深追いしてみようとしても、明確にこれだと規定することなく、漠然とした情景描写と心理描写の中で、意味を受け取る側の裁量に任せているようだ。その結果、ここで表現されていることが自分自身の周囲で起きている出来事とリンクしてとらえることができる。もちろん、考察してみようという意思の無いリスナーには、ただただ心地良いBGMとして楽しめるサウンドとして迫ってくるのだ。

このレビューの数日前、高橋幸宏のツイートが話題となった。明確にどうだということは言ってないのだけれど、坂本龍一から贈られたと思われる花の写真などから想像すると、もしかすると病を得て手術などすることになったのではないかとも思われる。それも、明確ではない。ただただ思わせぶりな表現に留められ、ツイートという、受けてからすればアカウントの人からのダイレクトな言葉を感じられるメディアを通じてでありながら、けっして距離を必要以上に縮めたりはしないよという意志が感じられてなんとももどかしい。その一連のツイートと、この曲での表現の曖昧さがリンクするようにも感じられた。

まあアーチストとリスナーの距離感などどうでもいいので、大事ありませんように。

(2020.8.20) (レビュアー:大島栄二)


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METAFIVE, review, 大島栄二

Posted by musipl