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BOKUHIKARU『犬のうた』【ああ、この人はとにかく犬が好きなんだなあ】

軽快なピアノから始まる曲。サザンの『希望の轍』を彷彿とさせるそのピアノイントロは、その期待感を裏切ることなく軽快なまま軽快な歌へと続いていく。その軽快さは終始途切れることなく、リスナーの心をずっと上げ続けていく。スゴイなこれ。その軽快なメロディに乗って終始犬のことを歌っている。サビの歌詞が「ワンワンワオーン」だぞ。すごい。何の哲学的なものも社会風刺も男女の感情もないけれど、ああ、この人はとにかく犬が好きなんだなあということはよくわかるし、そんなに犬が好きじゃない僕までも犬が好きかもしれないという錯覚に陥らせてくれる。これこそ音楽のマジックなんじゃなかろうか。

勝手な印象だし統計を取ったわけなんかじゃないけれど、世の中にはどちらかというとねこのことを歌った歌の方が多いような気がする。ねこは気まぐれで人間の想い通りになんて動いてくれないし、犬はしつけをすれば飼い主に従順に動いてくれる。恋愛なんかでも自分の想い通りに行かない悲恋の方が歌のテーマになりやすいし、そういうことからもねこの方が歌になる機会が多そうだというのは想像に難くない。しかし、犬のうただ。ここには飼い主の悩みなどなく、何の迷いも無く犬が好きということが描かれている。その迷いの無さがイントロから始まる軽快なメロディとリズムに乗って響いてくる。すごい歌だ、本当に。

この曲を歌うBOKUHIKARUというアーチストは、ほぼほぼ1年前に「ぼくひかる」というひらがな名のアーチストとしてレビューしている。どちらが正式なアーチスト名表記なのだろうかと調べてみるけれど、本当のところはよくわからない。前回のレビューでも彼女のアーチスト情報の不確かさについて触れているが、1年経ったところでもやはりよくわからない。まあそれでもいいのだ。この曲がパワフルで、前作とは違う傾向でありつつもグッとくることは間違いないし、その作風の幅広さも含め、優れた才能のアーチストであることだけは確かなのだから。

(2020.8.3) (レビュアー:大島栄二)


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BOKUHIKARU, review, 大島栄二

Posted by musipl