<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

あのね『暗闇を抜けたら』【悲しみマックスな現状と明確に向き合うこと】

  みんな一緒に不幸になって欲しいな
  そしたらこんなに悲しくならないのにな

冒頭の歌詞から「えええええ?」ってなる。どんだけ不幸やねん。どんだけ悲しいんやねん。そんな悲しみマックスな歌詞をサラリと平然と歌う。なにこれ、あのねって、つい最近レビューしたばかりやん。といっても昨年10月やけどな。その時の印象はそんなにダークネスなバンドじゃなかった。だって、冒頭の歌詞は「期待に胸が膨らんでは眠れないの」だぞ。期待マックスな歌。あのねの3人が地方の電車に乗って楽しげに旅をする。笑顔にあふれた、白が基調のMV。それに較べて黒基調の今回のMV。メンバー外のモデルさんみたいな人が映るシーンは別として、メンバーによる演奏パフォーマンスシーンが展開されていく。

しかしよくよく聴いていくとその悲しみマックスな歌もそんなに悲しみマックスというわけではない。「堕ちるところまで堕ちたから僕らもう大丈夫さ」って、いや堕ちるところマックスなんだろうけれど、なぜだか前向き。前向き超マックス。前回レビューした『眠らない夢を見た日』も、冒頭の歌詞こそ期待マックスだったものの、内容はかなり自己否定ワードの連続で、それなのに「私はどこまでも行けるよ」みたいな前進あるのみ的なことを歌っていた。なんだ、同じじゃん。そういう意味で、MVの色が白基調から黒基調に変わったところで彼女たちの世界観はまったく変わっていなかったのだった。すごいな。前回の曲が理由もなくポジティブなパワーに満ちていたのと較べ、今回はポジティブになるべき理由を明確に示しているといえよう。明確に示すということは、悲しみマックスな現状と明確に向き合うことが必要で、だからこそ同じような状況にいる人も共感しやすい曲に進化しているのではないだろうか。それは歌詞にも明確に現れていて、前作が「私はどこまでも行ける」だったのが、今作は「僕らもう大丈夫」になっている。「I」から「We」に変わっているのだ。現状を明確にすることで、同じ境遇の人と一緒に「大丈夫」になろうとしている。そこに彼女たちの心の強さが感じられるし、だからこそ「自分も大丈夫」と思える人は多くなっていくんじゃないかと思うのだ。

(2020.6.9) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, あのね, 大島栄二

Posted by musipl