古墳シスターズ『スチューデント』【ライブハウスがギュウギュウになって隣のヤツと「押すなよ押すなよ」的な空間がOKになる日よ早く戻ってこい】
なんかオモロイ。古墳シスターズって、みんな男なのでシスターじゃないし。香川県発のバンドで、香川に古墳ってあったっけ? ストレートなロックバンドのように見えるけれどドラマーのルックスはハードロッカーだし、なんだろうこれ、この微妙なアンバランスさは。じゃあダメなのか、アンバランスじゃダメなのか。そんなことはないよ。この勢い一発、それだけでゴーみたいなこのロックバンド、大好きだ。特別に素晴らしい声質でも歌唱力でもなくて、平たくいえばそんなに上手くない。でも、なのに、歌の上手さって何だっけ? 綺麗に音符をなぞればいいんだっけ? そんなのは声楽クラブにまかせときゃいいよ、ロックバンドはパッションだ、パッションの爆発がない上手い歌にロック的な価値なんて無いんだよ。その点、この古墳シスターズにはパッションがあるよ。うん、パッション全開で圧倒される。これ、ライブハウスで歌えば客席中がつられて一緒に歌っちゃうやつだ。そういう歌ってサビで決め台詞的な歌詞が連呼されちゃうのが多いけれど、このスチューデントって曲にはそれが無い。曲タイトルの「スチューデント」って言葉さえ出てこない。だから客席で皆がシャウトするには不利だ。かなり不利だよ。それなのに、ステージと客席が一体となってシングアウトしている姿が目に浮かぶよう。そういうパッションバンドは意外に少ない。だから、このなんかオモロい香川のバンドを見た時には、何故だか嬉しくなって嬉しくなって、ああ早いところ若造が多数集って狭いライブハウスがギュウギュウになって汗や唾をふりまきながら隣のヤツと「押すなよ押すなよ」的な空間がOKになる日よ戻ってこいよと思う。思うよなあ、思うだろ。そんなパッションを全世界に広げていっておくれと。心から願いたくなる歌に出会えて嬉しいよ。
(2020.6.4) (レビュアー:大島栄二)