Pokey LaFarge『Fuck Me Up』【オールドタイム風を漂わせつつも「現代」に繋ぎ留められる不思議な感覚】
古き良きアメリカーナとでも言うべきか。オールドタイム風を漂わせつつも「現代」に繋ぎ留められるような、不思議な感覚がおもしろい。ブルースやカントリーの空気を醸し出しながらモダンさを感じるのは、軽やかさ故かもしれない。この異なるベクトルの共存がとても刺激的だ。匂い立つほどの土着性溢れる音楽(微妙な例えになるが、ブルースではなく、ブルーズ! というような濁ったニュアンス)とは異なる。過去の伝統を俯瞰して、そこから一定の距離を取り、彼なりのカッコつきの「ルーツミュージック」を構築しているようだ。熱狂、そして傾倒しながらもとことんクールである、というスタイルだからこそ、こうした独特の姿勢を貫けるのではないだろうか。そのような俯瞰的距離感はユーモラスさも生む。それはMVにおいても感じられる。この曲だけでなく、どれも昔の映画テイストで見ていて楽しい。一瞬にしてかつてのアメリカっぽさを体感できるような作品だ。
(2020.5.20) (レビュアー:夜鍋太郎)