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RAM RIDER『東京論』【派手な動きの背景に映る、地味な東京の風景が感慨深い】

東京の街が動いている。いやそりゃ24時間眠らない街だから動いて当然だろというかもだけど、映像の中で有り得ない動き方をしている、そんなMV。こういう映像あんまり見たことなくて、それはおそらくベタだから誰もやらないという理由なんだろうと思われる。でも、こうして実際に見ると意外に新鮮で面白い。ベタとか言ってみたけれど、静止画の中でパーツを動かすのではなくて動画の中で動いているパーツを動かすのだからかなり面倒な作業が繰り返されているはず。よく見ると構図は地味に微妙に動いていて、その結果三脚を固定して撮った映像ではない風に見えるのだけれど、そんなことしたら動いているパーツを動かすのがめっちゃ大変になるのであって、だからおそらく、三脚で撮影した映像を使って各パーツを動かす処理をし、その後に編集済みの映像の一部を切り取る形で全体のフレームを動かしているんだろう。考えただけで面倒臭い。やれといわれてもやりたくない。全体のフレームからその一部分だけをズームしたり角度を揺らしたりするのだから、元映像はかなり高い解像度である必要があるだろう。4K映像とか使ってるのかもしれない。だとするとエフェクトをかけた後の処理にも余計に時間かかるだろうし、面倒臭い。絶対にやりたくない。どうしてもやれといわれたら最新の高機能パソコンを提供してくれといいたくなる。いや、それでもいやだな。

しかしこの映像を眺めていて気持ちを惹き付けられるのは、映像が動くというユニークさではなく、撮影されている風景の日常っぷりだ。一部東京の中でも超メジャーな光景もあるのだけれど、そうじゃない普通のなんてことない街並がほとんどで面白い。陸橋と測道が合流するところとか、高速内のトンネルとか。東京と名前のつく曲のMVではどうしても東京的な映像に仕上げたいという意識が働くのか、ランドマークとなるようなメジャーなスポットが背景に選ばれることが多い。東京タワーとか銀座ホコ天とか渋谷スクランブル交差点とか。けれど暮らしていてそういう場所に行くことはそんなに多いわけじゃない。東京にいても街で芸能人とすれ違ったりしないように、ほとんどの東京人にとって本当に何気ない街並こそ自分にとっての東京なのだ。それはたとえば京都に住む人にとって清水寺や金閣寺が日常でないのと同じことで。だから僕はこのMVの、いろいろなパーツが動いている派手な部分の背景として存在している、普通の街並がいろいろと映されて、見ることができるというのがとても良かった。

RAM RIDERというアーチストのことはあんまり知らなくて、プロフィールを見ると結構長い活動歴ある実力派のよう。こういうまだ知らないベテラン実力派がいるということを知って、あらためて「凄いな」と感じる。だからベテランであっても新しいファンとの出会いが期待できるし、模索する努力をし続けるべきなのだろう。そのひとつの試みとしてこういうユニークでベタなMVを制作するということにも大きな意味はあるように思う。いやホント、ご苦労さまでしたと言いたい。。

(2020.4.2) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl