NYAI『Pomason』
【とにかく面倒なことを言ったりしないでただただ「ポップ!」と叫びたい】
福岡のポップバンド。公式なプロフィールにはオルタナポップバンドと書いてあるけど、オルタナポップという括りってどうなんだろう。そもそも音楽に明確な境界線なんてないのだから、ジャンルがなんであろうと別にいいんだけれど、オルタナって便利な言葉というか、境界線の曖昧さをそのまま単語化したような印象があって、だからただのポップバンドというよりもオルタナポップバンドという方が、結局混沌とする感じで「じゃ、どんな音楽なんよ?」と疑問が深まる気がする。気がするだけだけど。
そんなジャンル論議はさておいて、というかさておきたくなる程にNYAIの音楽はとってもポップだ。まあもちろんポップにもいろいろあって、歌謡ポップとNYAIのポップはまったく違っていて、だからただのポップというよりオルタナポップと言った方がいいんじゃないかという意見も出てくるわけだが、そこのところをグッとこらえて「ポップ!」と言いたくなるほどにこれはポップだ。そのへんのポップアイドルが彼らの曲を歌えば、他のアイドルとは一線を画したとんがったイメージをつけられるぞ的な特色はあるけれど、とにかく面倒なことを言ったりしないでただただ「ポップ!」と叫びたい。賞賛したい。感じとしては初めてフリッパーズギター聴いた時のような新鮮さ。明らかに歌謡ポップとは違ってて、でもポップが持っている本来のパワーみたいなものを凝縮して凝縮して、つまりもの凄く濃いポップエッセンスに満ちたパワーを感じられて凄い。今はもう無いけれどベストテン的な番組にも堂々と入っていって歌謡の人たちと一緒にプレイしても全然負けてなくて歌謡番組の中心で堂々としてて、やがて歌謡の方が彼らの音楽になびいて来るんじゃないか的な、そんな勢いを感じられる。こういうのがちょくちょく出てくるので、やっぱ福岡って異国だよなあという想いを新たにする。いや、異国じゃないけど。島国の中の島の街なんだけど、どこかに大陸的なおおらかさで、こういう音楽の出現をあたたかく見守って押し出してくれているようで、やっぱ福岡好きだ。
(2020.3.3) (レビュアー:大島栄二)