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akane『愛し、まやかし』
【君の気持ちなんて分かるもんですか】

軽やかなピアノの音で始まるMV。映像に眼が止まる。これは京都だ、嵐山だ。日本でも有数の観光地嵐山を巡る。巡っている女性は誰なんだろうか。和太鼓メンバーのホノカさんなのだろうか。いや、そんなのはどうでもいい。MVに出てくるのがメンバーだと限った話ではないし、そんなのどうでもいい。画面に写る嵐山は主にメインストリート周辺で、ザ観光地といった非日常ぶり。観光客としてそこを歩くのは楽しい。それは普段とは違うからこその解放感も手伝うのだろうし、単なる漬け物屋がめっちゃ楽しかったりする。

一方で途中から風景は嵐山ではなくなってしまう。彼らの活動拠点である大阪なのだろうか。それを特定することに意味は無く、ただ、日常の街の風景ということでいいはず。ザ観光地の非日常と、普通の街の日常との対比が、見ていてビビッドに響いてくる。

この曲で、彼らは「君の気持ちなんて分かるもんですか」と繰り返し歌う。そりゃそうだ。他人の気持ちなんて分かるはずがない。もしかしたら自分自身の気持ちさえ正確に分かるなんてことは難しい。気持ちには表に浮かび上がってくるものと、奥底に沈んで届かないものとがあって、だから難しいし、困るし、楽しい。表に浮かび上がる楽しい何かだけをとらえていれば生きるのも楽だけれど、奥底に沈んでいるものが時々浮上してその楽しさを邪魔したりする。そういうことに翻弄されて、人間は諍ったり、別れたりする。でも楽しいばかりではいられないしな。ずっと非日常の場所でさまよっているのも、それはそれでしんどいことかもしれないしな。

彼らは和太鼓のホノカさんが脱退することを受け、活動を終了するそうな。それはそれは。解散や活動終了はバンドの宿命とはいえ、複数人で作るバンドというものが、メンバー同士の気持ちのすれ違いや方向性のズレなどから、もう続けてはいけないよというタイミングが訪れるのは寂しいことだ。

(2020.2.25) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl