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DENSHI JISION『月は毎年地球から3センチずつ離れている。』【彼らが名乗る「理系バンド」って一体なんでしょう?】

理系バンドでDENSHI JISION。いろいろな切り口というか、肩書きというか、キャッチフレーズがあるものだ。個人的には電子辞書は諸外国後に取り組む文系学生にこそ有用なアイテムだという気がするが、それを英語で書いたら一気に理系的に響いてくるから言葉って不思議だ。

そんな理系バンドが歌う『月は毎年地球から3センチずつ離れている。』。ほほう、そうなのかそうなのか。毎年3センチずつ離れているのか。じゃあ10年で30センチ、100年で3メートル。まあ誤差の範囲だな。子供の身長の成長の方がグングンいくぞ。いや、100年後に3メートルにはならんけどね。この曲でその月の離れていき方を理屈っぽく解説してくれるのかと思って聴いてたらどうもそんなんじゃないらしい。離れていく君との距離について歌っている。それを月の離れ方に、もはや人為でどうしようもない離れていく様に託して表現している。おお、なんと文学的な。平安貴族が月を眺めながらもののあわれを和歌にしたためたかのように文学的で驚いた。ベガとアルタイルに男女の人格を与えて年に一度だけ会えるみたいなストーリーを作るくらいにロマンチックで驚いた。「人は誰も月です」という歌詞がリフレイン。いや、人は誰もが月じゃないよ。科学的に考えるなら「人の何%かは月です」と言うべきなのに、「誰も月です」と無根拠に断言してしまう。この言い切りの潔さが文系的。全然理系バンドじゃないじゃないかあああああぁぁぁぁ!

いや、それでいいと思います。月が毎年地球から3センチずつ離れていく科学的メカニズムを解説するような歌を歌われても感情移入できないし。だから彼らが自らを「理系バンド」と名乗っていることは、極めて文系的な無根拠な断定として、受け入れるのがいいでしょう。そして理系バンドが歌う文学的な表現を楽しむのがいいでしょう。かつて聖飢魔Ⅱが自らを悪魔だといい、KISSが地獄からの使者だと名乗るのをまともに信じる人など誰もいなくて、ただただ彼らのパフォーマンスを楽しんでいたように。

(2020.1.21) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl