めぞんド山口『帰り道』
【昭和歌謡なんて肩書きは、消え去ってしまった方がいいような気がします】
めっちゃ好き。こういう音楽を何と呼べば良いのだろうか。ノスタルジーの固まりみたいな歌で、南沙織が歌ってた中に近いテイストのフレーズがあったような気がするけれど、だからといってこれを昭和歌謡という言葉で表現してしまったら台無しだ。そう考えると昭和歌謡っていうのは平成なんだけれども昭和っぽさを出している自分たちは結構レトロモダンでしょう的なあざとさを感じてしまうわけで、その辺がいわゆる平成の昭和歌謡を心の底から好きになれない理由だった。なのに、この曲は大好きだ。めっちゃ好き。令和になっても圧倒的な昭和テイストなんだけれども、もはや昭和とか令和とかどうだっていいやんと言ってる感じの、いや、そういうことさえ言ってない、当たり前に存在しているただの音楽。うん、そんな感じ。結局何も説明できてないけれど。んで、彼らのTwitterを眺めてると、名古屋のレコード屋さんが「ハンバート ハンバートやラッキーオールドサンが好きな人に」ってキャプション書いてた。ハンバート ハンバートはどうかなと思うけれど、ラッキーオールドサンはまさにそんな感じ。ジャンルとかどうでもよくねといわんばかりのただそこにある音楽。誰かがこういうの好きだからマーケティング的にどうとかいうあざとさが一切無い、ただそこにある音楽。それがたまたまレトロに聴こえるかもしれないが、どんな風に聴こえるかはリスナーが勝手に感じれば良いじゃんね的な。よく考えると昭和歌謡とかいったところで、その昭和的な響きを瞬時に理解できるのは少なくとも昭和63年に10歳くらいにはなってて歌謡曲を聴いてた人なのであって、だから41歳以上ということになる。今のティーンが昭和歌謡とか言ったところで解る訳がないのだし、だからもう、昭和歌謡なんて肩書きは、消え去ってしまった方がいいような気がします、令和なんだし。
福岡発のめぞんド山口。ファーストアルバムは「けやき通り」というタイトルで、福岡市の人ならあああそこねと誰もがわかる地名です。国体道路という道路の赤坂3丁目から警固までの通り。いや、今泉までなのかな、正確な位置はよくわからないけれどもまあとにかくあの辺り。そのくらい瞬時に福岡市内のことがわかる僕なのに、このMVに出てくる場所がいちいちわからない。福岡にこんなところあったかなあ、こんな川あったかなあと悩んで、途中で出てくるカレー屋をチェックしたら、山口県周南市だったようです。この曲が収録されているセカンドアルバムが「旅路はつづく」というタイトルなので、福岡市内で撮影するよりも旅に出た先の方が良かったのかもしれません。それにバンド名がバンド名ですしね。
(2020.1.9) (レビュアー:大島栄二)