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みかんサイダー『東京』
【いやあ本当に東京は忙しい街だよなあと思わずにいられない】

東京で路上演奏活動をするデュオの歌う東京。なんでこんなにも哀しさに満ちているんだろう。歌詞の中ではまだここで頑張る理由があるはずと前向きさを見せているのに。彼女たちがこの曲の前に公開したMVに『Summer Tune』という曲があって、そのハッピーさといったら、無い。どこかのビーチで2人で軽いステップで歩いて、ギターを弾いて歌っている。歌というよりヒップホップのような感じの、だからそういうユニットなんだと思ってた。それが一転して哀しげなアルペジオの調べから始まる切ない歌。この表現の幅広さは一体何なんだと正直驚く。夏をテーマにしてビーチで撮影したMVが底抜けに明るいのに対して東京をテーマにした曲が寂寥感に満ちているというのが興味深い。たまたまなのか。それとも必然なのか。どちらにしてもいろいろと後付けの説明はできるだろうし、だからどっちの線で説明をしたところであまり意味は無い。聴いた人がそれぞれ感じればいいことで、僕は、彼女たちが日常的に感じていることがそのまま楽曲に現れているんだろうという気がする。気がするだけだけど。

11月の終わりに公開されているこのMV、2人が着ている服はそこそこ暖かそうなジャケット(ジャンバー? コート? 何と呼ぶべきかはわかりません)で、道行く人たちも暖かそうな格好をしている。そういう時期にそとでギターを弾くのは指先が切れそうになるに違いない。それでも路上に弾き語りの人はいて、京都にだって弾き語りの人はいて、時々見かけると本当に寒いだろうなあと心配になる。指先が凍えれば弦を押さえる指の動きが鈍くなるのは当たり前のことで、演奏が多少ダメでも見逃すつもり満々で見ているけれど、そういうストリートミュージシャンは驚くほど上手で、寒さなんて感じてませんよという笑顔でパフォーマンスしている。おいおいみんな素通りすんなよ、頑張ってんだぞと思うけれど、まあ素通りする人にも急いでいる理由はあるので、いやあ本当に東京は忙しい街だよなあと思わずにいられない。

すべての忙しい人にもハッピーが訪れるクリスマスでありますように。

(2019.12.24) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl