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FiSHBORN『此処から』【彼女たちの強い歌から、少しだけ顔を上げる力をもらえるような気がする】

「いつか覚める夢を見ている。」大阪高槻のガールズロックバンドによる瞬発力を感じさせてくれる曲は、バンド活動にかける情熱と、ただ熱いばかりではない冷静な視線を織り交ぜながら迫ってくる。そう、バンドは次々に解散する。昨年はチャットモンチーも解散した。それだけじゃないよ、あのバンドもこのバンドもせっかく成功したのにどんどんと解散する。地位も名声も獲得したバンドだけじゃなく、成功など夢のまた夢という状態ではなおさら簡単に解散する。解散せずに続けるのはよほど何かにがんじがらめにされているか、よほど太い神経が抜けているかのどちらかかもしれない。だから、名前を出すわけにはいかないが、あのバンドもそのバンドもやがて解散するだろう。

それでも、バンドは次々と誕生する。成功したとしても昔ほどの収入には到達しなくなった音楽で、成功してるバンドでも地方を転々としながらライブを続ける毎日で、そんなことはわかっているのに若者はバンドを結成し、スタート地点で気勢を上げる。その姿に、もしかしたらこのバンドこそは解散することなく永遠に活動を止めないかもと期待してみたりする。そう、そんな幻想を信じさせてくれるバンドを、僕らは待っているんじゃないかと思ったりするのだ。

FiSHBORNというバンドはシンプルな想いをメッセージにして強く歌う。強く歌うというのは、本当に強いということではなくて、自らを鼓舞するかのように歌に向かうという意味で、その試みはかなり成功しているように感じられる。その強い歌によって自分たちの顔を上に向かせようとしているし、その結果、聴く側も少しだけ顔を上げる力をもらえるような気がする。今後の活動で様々なことがあるだろうし、時にバンドを続けていくパワーを失いそうになるかもしれないが、そんな時こそこの原点のような曲を思い出し、また前へ進んでいき続けてもらいたいし、できるんじゃないかなあと淡い期待を抱かせてくれる。

(2019.11.8) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl