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鶴『バタフライ』【何度でもやりなおせるんだという彼らの優しく沁みる歌】

鶴も気がついたらメジャーデビュー10周年。あれ、これ鶴だっけ? 鶴ってアフロヘアのバンドじゃなかったっけ。もしかしたらこれは僕が思ってるあの鶴とは違う別のバンドなんだっけ。不安になって調べてみたらやっぱりあの鶴でした。そもそもオフィシャルサイトのアドレスがafrock.jpだし。そのサイトのプロフィール欄を見てたら、2011年の10月にアフロ引退を表明してた。もう8年も前のことじゃん。メジャーで着々と活動していた様子をずーっとノーチェックでした。すみません。デビュー当時に目立つヘアスタイルで活動してたけれど後に普通になったというのは彼らに限ったことじゃなく、BUCK-TICKやBIRD、スキマスイッチなんかもそうだ。やっぱりその髪型を維持し続けるのは大変なことなんだろうね。そう考えるとデビュー以来髪型とメイクを維持し続けてるデーモン閣下はすごいとあらためて感心する。

それはさておき、久々に見た鶴のこの曲はとても落ち着いたテイストで、心にしみる。【遠回りしたって近づいているんだ】とYouTubeの説明欄に書いてある。それは歌詞の中にある言葉で、この曲のキモなんだろう。遅ればせながら彼らのチャンネルにあるMVを全部聴く。いくつかのテイストがあるものの、この「バタフライ」はここ数年に公開されているいくつかの曲に一貫して在る主張のひとつのように感じられる。それは、先が見えない日々の先には必ず良いことあるよ的な、ポジティブな応援メッセージ。そもそも【遠回りしたって近づいているんだ】という場合に「何」に近づいているのかはかなり曖昧だ。もちろん人によって目指しているものは違うのだし、だから歌の中で具体的な何かを明確にするわけにはいかない。しかし、生きている人たちのすべてが具体的な目標を持って生きているわけじゃなく、だから日々の些末な事柄に右往左往させられながら24時間が365日が過ぎ去っている。そんな人たちばかりなんじゃないだろうか、実際のところ。では明確な目標を持たずに暮らしているからといって、この先どうなってもいいんだという投げやりな心持ちで生きているのかというとそうでもなくて、漠然とした幸せを願っている。ほとんどの人は幸せになりたくて日々を過ごしてる。『グッドデイ バッドデイ どんとこい』では「今日もまたこの1歩は前へ行くのか後ろなのか/後悔はきっと素敵な君になるためにある」と歌う。『歩く this way』では「いくつになってもゴールがないのは生きている証拠/涙を拭いて終わることのない旅に出よう」と歌う。そしてこの曲では「遠回りしたって近づいているんだ/何度転んだって歩き出せるんだ」と歌う。沁みる。彼らにとっての音楽活動も、きっとゴールなんて到達することなどないだろうし、それでも日々、全国を回り、自主フェスを企画開催したりする。その結果がどこに向かうのか。そんなことは誰にもわからないし、実際明確なゴールなんてあるはずもない。だって、ゴールがないのは生きている証拠なのだから。生きている限り、僕らは悩み、迷い、時に苦しむ。見通しのきかない日々にこれでいいのかと思う。思ったところで、考えを巡らせたところで、ゴールなんて無いのだから、やはり淡々と生きていくしかなかったりする。それでもね、何度でもやりなおせるんだという彼らの歌は優しく沁みてくる。
(2019.8.31) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl