chick in wisteria『いつまでも』【会えるうちに会っておきたいじゃないか。親友なんだから】
人の出会いは突然なのが普通で、ある時偶然に半強制的に同じクラスに放り込まれて、席が隣になってしまったヤツといつの間にか親友になってしまう。いや、隣の席になったからといって誰とでも親友になれる訳ではなくて、特別に波長が合うとか、何かの作用で親友というのはできてしまう。それは偶然でも強制でもなくて、必然なんだろう、たまたま出会えたことも含めて。
chick in wisteriaというまだまだ無名なバンドのこの曲は、そんなあたりまえのことをサラリと情熱的に歌っている。そしてその必然な出会いを経たにもかかわらず、いつの間にか毎日会ってたような日々が過ぎると別々の道を歩き始めて、知らないうちにもう何年も会わずにいるという状態になってしまうということも歌っている。深いな。あっさりとサラリと歌っているけれど、深いな。人生に必要なものっていったい何なのかというと、やはり友達じゃないだろうか。しかし生きる上ではお金も必要で、ともすればそれを優先させてしまって、あの大切だった親友は今どこで何してるんだろうかということになってしまう。そしてふと訪れた親友の訃報。悲しいな。悲しいな。でも本当に悲しいのだろうか。ずっと忘れてて、訃報がもし届かなかったら、心の中でそいつは生きているのと変わらないのであって、だったら、ずっと会わないでも平気でいられる元親友の死なんて、そんなに悲しいことなんだろうか。
そういうと、いやいやそうじゃないよと反発を喰らうことになる。そりゃそうだ。そんなにドライに考えて良い訳がない。ずいぶん会ってなくたって、親友は親友なんだよ。もしも死んだとしても、その死が親友関係の終わりということではなくて、自分がそいつのことを大切に思い続けるのなら、やはり親友同士であることに変わりなんてあるはずもなくて。
でも、できることなら生きているうちに会いたいじゃないか。会えるうちに会っておきたいじゃないか。親友なんだから。これは別に人間同士のことでなくてもよくて、大切にしてる歌とかバンドとかもそうで。解散したり、亡くなったりしたら、突然哀しみの声が沸き起こるのを何度も見たり聞いたりした。そりゃ悲しいよ。好きだった何かが終わることなんて本当に悲しいよ。でもまだ自分の好きなバンドが解散せずに歌い続けているのだとしたら、ライブに行ったり、音源を聴いてみたり、日常的にすればいいんだと思う。そのくらいの余裕を、日常の中に確保することも、人生にとっては大切なことだ。そんな大切なことを思い起させてくれる、この曲は地味に名曲だと思う。
(2019.6.11) (レビュアー:大島栄二)