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雨のパレード『Ahead Ahead』【純粋にシンプルに心地よいギターの鳴りから始まる心地良い曲】

雨のパレードは既に有名バンドだと思うけれど、昔みたいに地上波テレビの音楽番組に出まくるとかではないので、知らない人は知らないのだろう。4月に公開されたこの動画には、「ラジオで(偶然)流れて、必死で歌詞を聴き取って、必死で検索してここまで辿り着きました」というコメントがあった。まだまだ、知らない人はけっして少なくない。

musiplで最初に取り上げたのは2014年でまだメジャーデビューのはるか前。バンド編成でありながら総合アートプロジェクトというふれこみで、また厄介な主張のバンドが出てきたなと思った。その動画も気がついたら既に削除されていて、どうなんだろうか、メジャーに行くとその辺の過去作品がクローズドにされてしまうのか、それとも自らの意志で過去とは決別したのだろうか。今こうして聴いてみると、自分たちのスタイルや立ち位置がどうなのかなんてことにこだわること無く、ただシンプルにステキな音を出していて、そのしなやかさが心地良い。個人的にだが、冒頭イントロのギターが16秒ほどあって、そのギターの音がとても心地良い。楽曲全体を聴く前に引き込まれる。こんなギターの音、ずいぶん聴いていない。もうそれだけで、彼らのことを知らなくても、いいな、1曲聴いてみたいなと思う。イントロが終わって歌い出すところを待つボーカルKOHEIの表情もまたイイ。若い頃のカミソリのようだった佐野元春を思い出させる。いや、そんな古い話はどうでもいい。なんらかのためらいのような、それでいて次に進む覚悟のようなものを感じさせる。

この1月にベーシストが脱退し、この楽曲を含むアルバムが彼らの新たな章のスタートとなった。タイトルの「AHEAD AHEAD」というのも過去を振り返らないという意志の現れなのだろうか。バンドの体制が変わるとき、人だから当然いろいろな感情が渦巻くし、その中から再スタートする時に新たな決意のようなものを作品に込めたくなるのはある意味当然のことだろう。そのことを加味して、作品とバンドの意志のようなものを感じ取ることはリスナーの自由だし、そうすることが作品鑑賞に深みを与えたりするだろう。だが、そんなことは脇に置いといて、ただ単純に作品を、個々の音を楽しむだけでも十分に堪能できる作品はある。この曲もそういう曲のひとつだろう。

(2019.5.16) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二, 雨のパレード

Posted by musipl