Helado Negro『Running』【大地の目覚めにそっと寄り添うような無国籍風の音楽】
どこか不思議さを孕む、静かな曲の始まりから、はっとさせられる。それは夜明けとともに世界が色づき始めるような、そんな感覚に近いかもしれない。少しずつ明るくなり、眼前の景色が開けていく。ゆったりと動き出す、世界の朝。まるで、そんな大地の目覚めに、そっと寄り添ってくれている音楽のようだ。シンプルに、丁寧に繰り返されるフレーズがあまりに心地よい。わたしたちの体内に、音が自然に溶け込んでくる。まぶたが太陽の光で赤く染まり、少しずつあたたまっていく感覚にも似ている。3月に6作目のアルバムが発売。ソロアーティストのHelado Negroはニューヨークを拠点に活動しているようだが、無国籍風というのか多国籍風というのか。ジャンルの特定も難しいが、新しさ、なつかしさ、その両極に触れるような曲、という印象だ。先に夜明けをたとえに出したが、モノクロのMVが続いた最後で、太陽の光が差し込み、色が浮き上がる、その様はあまりにうつくしい。
(2019.4.24) (レビュアー:夜鍋太郎)