THE YELLOW MONKEY『I don’t know』
【若さ故の力強さとはまた違う強さ。美しく、力強い曲だ。そしてロックだ】
人生というものを考える。若い人も、年老いた人も。それぞれが考える人生の様相は、立っている場所が違うのだから見え方もそれぞれなのは当然で。他人がどんなトンネルの中で強風にさらされながら暗闇を眺めているのか、それとも登りきった頂点で風ひとつない青空を眺めているのか。どういう立場であれどういう場所であれ、人は人生を考え、自分は何者かを問う。たとえそれが答えなど求めようのない問だとしても。
人間には届き得ない場所というものがある。それに挑んで克服したのが人類の進歩の歴史であり、だから届き得ないと最初から諦めるのは間違いだ。とはいえ挑んだ誰もが届き得るのかというとそんなこともなく。むしろほぼ全てと言っても過言ではない挑戦者が敗北者となる。失われた時間と情熱の重さに気がついた時には既に時遅く。それに気がついて絶望して、消え去ることを熱望するか、絶望のまま生き続けるか。100人いれば100通りの敗北の形があり、他人と共有できない絶望の中で、人は孤独に時を過ごす。負けたことに気がつかずにいられればそれが一番幸せなことかもしれない。
この曲には断片的な言葉が散りばめられている。具体的な幸せも苦しみも示してはいないものの、断片の積み重ねが聴いていてじわじわと迫ってくる。淡々と歌う吉井和哉の声が若い頃のそれとは少し違って、張らない強さを見せている。若さ故の力強さとはまた違う強さ。日々老いていく人生を生き抜く秘訣は、若い強さとは違う強さに気付くことができるのかどうかにかかっているように感じさせる。80年代90年代のバンドたちが○○周年ということで再結成することも多いが、そのほとんどは○○周年の花火のようなイベントで輝き、そしてまた活動を辞めていく。2016年に再結成したイエモンもそんなバンドの軌跡を辿るのではないかと思っていたが、実際には精力的に活動を続けている。今月17日には実に19年ぶりとなるオリジナルアルバムをリリースし、その後5ヶ月に渡る全国ツアーが予定されている。過去の栄光にすがった花火を上げるのではなく、葛藤を経た「今」のイエモンが明日を切り拓くようなその姿と活動には、再び強風に立ち向かおうという彼らの決意のようなものを感じられるし、だからこそ、ロックは全ての世代にとって生きる魂なのだと確信させてくれる。美しく、力強い曲だ。そしてロックだ。
(2019.4.4) (レビュアー:大島栄二)