BUMP OF CHICKEN『話がしたいよ』
【変わることで変わらないでいる、歴史を重ねたバンドの境地】
バンプはずっと音楽シーンにいるし、だから実際はもういいオッサンバンドなんだろうと思ってググってみたらボーカルの藤原基央はまだ39歳。オッサンバンドというにはそこまで歳じゃなかった。いや39歳というのがオッサンなのかどうなのかは微妙だし、バンド結成から22年、メジャーになってからも18年経過していて、ベテランなのは間違いないしデビューした頃の瑞々しさはやはりもう無いと思うのだけれども、まだ30代というのは今の感覚からすればオッサンと言い切るにはまだまだ早すぎる。それなのにこの曲は老成した印象が強くて。だから初心に還るではないけれども名曲『天体観測』を聴き直してみる。ロックだ。やっぱりこれロックだよ。サウンドの中心が歌じゃない。ギターだ。このギターの音量レベルの高さ大きさが挑戦的というか歌を期待するリスナーを完全に置き去り状態のミックスで、ロックだ。じゃあ歌が聴こえないのかというとまったくそんなことはなくて、藤原の声はどっかと中心に存在していて、このミックスすごいなと改めて思う。17年前の曲なのに今さら思う。それに比べればこの曲はなんかフォーク。フォークをロックより下だというのではないけれども、オープニングがいきなり鍵盤でストリングスが入ってきて、ギターがアルペジオで軽やかに鳴っていて。やはりフォーク。いやもちろんロックなんだけれど、天体観測に較べたらまったく別モノ。2000年の頃の20歳前後のファンたちが当時求めていたものと、そこから18年ほど経過した38歳前後のファンたちが今求めているものはきっと違ってきてて、そんなに過激なサウンドはもうよくて、自分たちと一緒に歳をとってきた藤原の声がちゃんとそこにあれば、あとは安心できるような落ち着きのあるサウンドの方がいいのだろう。そのことはファンを大切にするバンドに不可欠なもので、いつまでも過激なままの存在でいるより、年相応の変化をしていくことがファンとの距離を変わらないものとして保つ術であり、それこそが成長というものなのかもしれない。20年以上バンドがコンスタントに活動を続けていくということの難しさは多くのバンドが解散していくことが証明している。バンプがこうして歩みを止めずに到達している今こそが、そんじょそこらのバンドには辿り着くことさえできない場所であり、そこに一緒に歩んでくることができたファンは幸せだろうなあ。そしてこれからも彼らは止まることなく続いていくのだろう。
(2018.11.17) (レビュアー:大島栄二)