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POLTA『失踪志願』
【他に類を見ない、希有なポップで明るい深刻さ】

こんなにポップに明るく深刻なことを歌わせたらPOLTAの右に出るものはいないと思います、ええ。なぜそんなことになるのか。深刻なことをポップに明るく歌うと普通は単なるコミックソングになってしまい、深刻な部分が深刻に感じられなくなってしまう。つまりそういう場合に作者は「おもしろおかしい作品にしようぜ」という想いが先に立ち、深刻な気持ちがどこかに飛んでしまう。もしくは最初から深刻な気持ちなど持ってなかったということなのだろう。例えば社会問題や人権問題がニュースになったりSNSで触れる人が多くなってきたりする。そういう場合「哀れな被害者の気持ちに寄り添う」的な立場が優先して寄り添っている発言をみんなするんだけれども、結局被害者や困っている人の気持ちを完全に理解することなど難しくて、だってそうでしょう、体験していないんだもの。それでも理解しようとする姿勢を持つことは大事なんだけれども、それを曲作りにつなげようとか明るくポップになんて考え始めるともう商売だから、どんどん気持ちは乖離していく。だから深刻な何かを明るくポップに表現するなんてことは至難の業。それなのにPOLTAのこのポップな深刻さはどうよ。多分、おそらくだが、POLTAの2人は70年代歌謡曲が好きだったりするしポップなことが好きで、そういう純粋にポップな作品を作ろうとしているんだけれど、内面に深刻な何かを抱えているためにどうしても作品が深刻になっていってしまう。深刻なことを表現しようなどと考えていないのに表現すれば深刻なものが滲み出てきてしまう。深刻から抜け出そうと無意識のうちにPOPを指向するものの結局深刻の泥沼からは抜け出せずにいる、のではなかろうか。まあこれは推測であり妄想であり、だからPOLTAからは「ふっ、そんなバカな」とせせら笑われるだろうと思うけれども、本人の意図や僕の妄想とは関係なく、作品のポップで明るい深刻さは間違いなくホンモノであり、作品としても存在としても高く評価されるべきだ。間違いない。

(2018.10.18) (レビュアー:大島栄二)


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POLTA, review, 大島栄二

Posted by musipl