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MONAN『夏の水槽』【夏が終わる時の寂しさや物足りなさがよく表れている】

どの季節にも良いところも悪いところもあって、待ち遠しかったり、過ぎるのが寂しかったり。そんな中でも夏が終わる頃というのはまた特別な感傷がある。今年のように酷暑で自然災害が多かった夏でさえそうだ。こんなに暑いのはもう勘弁してくれと思い、毎週のように次々と直撃するとか台風いい加減にしろと思い。なのにそんな夏が終わり、蝉の声ももう聞こえなくなってしまうと何故かせつない。暦の上ではもう秋といいつつも木々の紅葉やまだまだ先だからなのと、夏の熱によって火照った体温がまだ下がりきらないからなのではないだろうか。ともかく、夏の終わりには特別な感傷が付きまとう。まだまだ無名なMONANというバンドのこの曲が持っている雰囲気はそういう夏の終わりの不安定さをよく表している。ボーカル菊澤周の声は絶妙に力が抜けていて、シャウトをしても全力で殴っているようなインパクトはなく、演奏も適度に音符の間に隙間があるような詰まらなさで、目の粗い網から何かが漏れていくような手応えがある。この声で、サビ終わりで間奏に入る直前に「あ〜あ」と歌うところが良い。ひとつの季節が終わる時の寂しさや物足りなさがよく表れている。昨今の若手男性バンドの多くは妙に肩に力の入ったパワフルパフォーマンスに向かうことが多く、それはほとんどの場合本人たちの不安や自信のなさの裏返しなのではないかと思っている。力を抜くというのは意外と難しいことで、自信を持った安定した心持ちでなければ力を抜いた自然体の表現などできやしない。MONANがそうだという確証があるわけではないけれど、この曲を聴く限り夏の終わりをよく表していて、自信を持ってパフォーマンスをするに十分な力を持ったバンドだよなあと確信できる。

(2018.10.11) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl