YONA YONA WEEKENDERS『誰もいないsea』
【立ち位置も意味合いも時代とともに変わるシティポップ】
こういうサウンドをシティポップと呼んでいたのはもう既に時代の彼方に去っていったような気がする。彼らのサイトで自らシティポップバンドと書いているし、ジャンルとしてはシティポップというのは今も幅広い音楽シーンの中核に燦然と位置しているのだが、それ故にこの種の音楽にシティという言葉が用いられているのはちょっと違うんじゃないかと感じるのだ。
そう、音楽が国境も軽々と超えていく現代に於いて、シティかローカルかアーバンかルーラルかなんて限定をつけること自体が旧い考えのような気がして。
しかし都会や田舎というものが持っている色や香りというものは確かにあって、音楽の雰囲気をジャンルの呼び名が表す役割を担うのであれば、今もシティポップというジャンル名にはまだ意味があるのかもしれない。とはいえ、シティというものの在り方、意味合いは変わってきている。かつてはむしろ田舎の側からシティを憧れ、憧れた側のシティの方も期待されるシティの偶像を演じる。そこには虚がある。虚は理想という名前で呼ばれれば目指すべき憧れでもあるが、虚である以上無理が生じる。かつてのシティポップが憧れに向かう心持ちの指針を担っていたのに対し、今のシティポップは虚によって生じた無理を癒すような役割を果たしているように感じられるのだ。
YONA YONA WEEKENDERSの新曲『誰もいないsea』はトロピカルなテイストを持ちながら、軽やかなギターリフを聴かせてくれる。タイトルにseaとあるように、MVでも海のサンセットが映され、もはやシティの面影はどこにもない。大瀧英一のジャケットを永井博が飾っていた一連のサウンドとビジュアルの関係性を思い起させる。だが、サウンドはやはりシティポップなのだ。立ち位置も意味合いも時代とともに変わりながら、サウンドはやはりサウンドとして変わらずにシティポップ。それが誰もいない海の寂しさと心地良さを見事に表現していて、このバンドやるなと思わずにいられない。
(2018.10.5) (レビュアー:大島栄二)