Rocket of the Bulldogs『朝焼けのドラマ』【映像によって楽曲とは違ったイメージが膨らんだMV】
5人のメンバーを真上から写したアングルがとても面白い。正確には真上から写しているのではなくて、1人ずつ前方斜め上から撮影してあとで合成しているわけで、だから頭頂部のみが写っているというのとは違う画像になっている。この映像を見て、初代iMacのポスターを思い浮かべた。それとこのMVになんか関係があるのかというと、まったくないのだけれど、映像の面白いところはそういった無関係な連想をすることがあるということだろう。この曲が初代iMacと関係があるはずも無いけれど、そういうものが連想されてしまうともうそれにしか見えなくなって、彼らの音楽までスタイリッシュな何かに思えてきてしまうから不思議だ。実際の楽曲は心の葛藤を全部さらけ出すように歌っていて、スタイリッシュというよりもむしろ泥臭い。しかも自分のダメなところも自分自身は全肯定するぞとでもいうような内容で、スタイリッシュとはむしろ真逆だったりもする。僕はこのさらけ出し本心ソングと、自分を肯定することで前に進んでいく力を得るというロジックが嫌いではないし、むしろ好きだし、映像無しで楽曲だけ聴いたとしても好感を持ったと思うが、それにこの映像が加わることでまた違った印象を持てて、ああ、ミュージックビデオって面白いなあと改めて感じる作品だった。 こういうスタイルでアングルで撮影したビデオなので、メンバーのアップもなくて表情さえ見ることができない。というか曲に合わせて弾いているのかどうかも実際はよくわからない。手元の動きはまったくわからないからだ。しかし編集をする時にはメンバーそれぞれのテイクを角度を変えて背景を消して5つ位置調整しながら配置していって、なおかつ楽曲と合わせようと苦労が伝わってくる。いや、普通のリスナーはそんなこと考える必要ないし、音と映像がちょっとでもずれてると感じたら「ダメじゃん」と考えるだけなのだろうが、ビデオを作ったりする経験があるとそんな風には思えなくて、大変そうだ、頑張ってるなとついつい思ってしまう。他のメンバーはよくわからないものの、ドラムだけは完璧にシンクロしていて、だから他のパートもきっちりと曲と合わせているんだよなあと想像できる。うん、制作側の努力も含めて、とても評価できるMVだなあと思う。
(2018.8.6) (レビュアー:大島栄二)