Tierra Whack『Pet Cemetery』【まんまとはまってしまえる、はまって楽しい、夢のような世界へようこそ】
掌編小説というやつが好きだ。堅苦しいなら、ショートショートとでも言うべきか。でも星新一的なものよりももっと短い、Sudden Fiction、と呼ばれるような、昔アメリカで流行った超短編小説が一番近いだろう。一瞬の夢を切り取ったような世界に、読者もつかの間浸る。その感覚が楽しい。でも夢同様に、意味を求めることがそもそも無理、というようなジャンルでもある。彼女の15曲で15分というアルバムを聴き、まさに掌編を読んでいるような気分になった。曲が始まったかと思うと、一瞬で世界が変わる。耳心地のよいポップさをベースに、どの曲も丁寧に作りこまれ、歌もの、としても成立している。めくるめく変化する世界に引き込まれずにいられない。紹介するのは1曲だけのMVだが、15分、アルバム丸ごと視聴できるバージョンもある。この試みはプロモーション的側面も感じさせはする。だが、それにまんまとはまってしまえる、はまって楽しい、夢のような世界へようこそ。
(2018.6.27) (レビュアー:夜鍋太郎)