two days market『Strangeman’s world』【高排気量のエンジンで高速走行をする時のような、安定した声の伸びが心地良い】
沁みる歌。すべての音域で安定的にスーッと伸びる声。肺活量が十二分にあるのか、きちんとしたトレーニングを経ているのか。ささやくように泣くような声での歌も悪くないが、こういう力強い歌はやはりいい。軽のような排気量が小さなエンジンで高速を走る時の不安感を知ると、大排気量の車の高速走行がいかに安定していて心地良いのかがわかる。この歌は、そういう心地良さを持っている。歌の内容がどうとか、アーチストの個性やオリジナリティがどうだとかいうのとは違う次元の安心感。純粋に歌を聴くということの愉しさを実感させてくれる。彼らのYouTubeチャンネルにはこの他にスキマスイッチの曲をカバーしたスタジオ動画がアップされている。無名のアーチストがカバーをすることの意義は、その曲名やアーチスト名で検索されたり、関連動画として表示されることによって自らの存在を知ってもらうきっかけを得るというものだ。その効果を願って多くの無名アーチストたちはカバーを公開する。しかしそれは自分たちの楽曲ではないのだから、オリジナルアーチストのコピーをやっても仕方なく、そのカバーの中に自分たちの個性を示せなければ徒労に終わる。つまり実力と個性を持っているアーチストにのみその手法は意味がある。彼らのように、歌唱力と演奏力が申し分無いアーチストにこそ意味のある方法なんだろうと思う。
(2018.6.15) (レビュアー:大島栄二)