Logi『karagara』【いつかきっと春が来ると信じて生きていく】
岩手のバンドLogi。プロフィールに「春を待ち冬を耐え生きている。言葉にせずとも分かり合いながら。花は咲くのです。」と書いてある。岩手では雪は当たり前の光景なのだろうか。MVには当たり前のように雪景色が出てくる。その中で、ジャンバーのような厚手の上着をはおることもなくメンバーが立っている。そのうち1人は少しばかり腕まくりさえしている。雪国育ちではない僕からすればもうそれだけで信じられない。雪が降る日は四季の中で寒さのピークだ。その時に厚着しないでいつ厚着するのだ。だがそれは降った雪が積もったところで1日で止み、数日もすれば雪など跡形もなく溶け去ってしまう場所だからの考えなのかもしれない。雪がひと冬溶けることのない場所での暮らしは耐えながら生きるのが当たり前で、その当たり前の日々の中で厚着もせずに腕をまくるというのは、いつか来るはずの雪解けに向けた、希望がこの身体の内にあるんだぞということの確認作業のようなものなのではないかと妄想してみた。いや、雪国でも何でもないところの人の妄想に過ぎないんだけれども。
Logiは3月末のワンマンライブを最後にメンバーが脱退し、現在は1人バンドとしてメンバー募集をしながらバンドとしての再始動を期しているそうだ。バンドをやっていればメンバーの脱退は避けられないこと。違う人格の人が違う人生を生きているのだから当たり前だ。だからこそひとときの幸運な邂逅の結実のようなバンドミュージックは美しいのだ。不幸にもメンバーがバラバラになってしまえば、再起を期したところで必ずしも復活が約束されているわけではない。だが、いつかきっと春が来ると信じて生きていくしかないのだ。グッドミュージックを奏でる岩手のバンドに春が来ることを祈りたい。
(2018.5.31) (レビュアー:大島栄二)