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君がそうなら僕はこう『集客ヤバイ節』【全人類に向けた根源的な悩みを突きつけるシニカルな名曲】

もうね、大好き。最初のひと声が「SHUKYAKU!」ってシャウト。いや、それ集客だから。別にカッコよくないから。でもそれをカメラ目線で指差してシャウト。もうね、カッコイイ。歌ってる内容は「集客がヤバい」だけだから。この開き直り。すべてのバンドマンとスタッフたちが涙なくして聴けないですよ。どのくらいの集客であれば「ヤバい」のかはバンドによって違っているわけで、50人で満員のライブハウスなら3人くらいか? もちろんそこで50人呼べれば満員なのでヤバいことはないけれども、300人キャパの会場で50人だったらやっぱりヤバい。だが50人ワンマンを成功したバンドには半年後の150人キャパの会場でのワンマンが待っているだろうし、150人キャパワンマンを成功すれば当然300人キャパワンマンが待っている。どんどん人気が出て2084人キャパの渋谷公会堂に辿り着けばせめて1800人くらいは動員したいし、それが無理でも1階席1235人は動員したいもの。その流れは武道館や東京ドームへとどんどんエスカレートしていくわけで、途中で動員の限界が見えればバンドのビジネス的な発展はそこで終了。後は昔つかんだ熱心なファンをいつまでもつなぎ止める活動が待っている。話が逸れてしまったけれども、要するにどんなバンドもライブの集客問題は頭の痛いことであって、だからすべてのバンドはこの曲を涙なくして聴くことはできないだろうと。まさにバンド業界というニッチなマーケットではあるものの、強烈なメッセージを持った、共感を集め得る強力な楽曲だ。いや、もちろん集客がヤバいのはバンドだけではなく、すべての飲食店、すべての小売店、すべてのwebSEO業者、などなど、ビジネスをしているすべての人にとって切実なインパクトを持って迫ってくる曲なのではないだろうか。「ヤバイバイバイバイ、集客がヤバい」を「ヤバイバイバイバイ、売上げがヤバい」とするとか、「ヤバイバイバイバイ、給料がヤバい」とか、ちょっと歌詞を変えれば全人類に当てはまる曲なのでは無いだろうか。君がそうなら僕はこうという、思わせぶりなバンド名を見ると、ひねくれて世をはかなんだ中二病的な歌を歌うんじゃないかなどと思ってしまいがちだが、そんな思い込みがブッ飛ぶくらいの、全人類に向けた根源的な悩みを突きつける、これは本当にシニカルな名曲だと思ってしまうのである。

(2018.4.2) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl