くるり『温泉』
【今でこそ、こういうのどかさで世俗の垢を落とせるように】
サウナやシャワー、湯治の世界地図がなかなか改変がおこなれることはないながら、温泉、お風呂のカルチャーの日本の奥深さはいいなと歳を重ねるたびに思う。様ざまな疲弊や草臥れを溶かすにはやはりお風呂に限る。昨年に東海地方の常滑という場で泊まったホテルは人工天然温泉というよくわからないものだったが、滞在中に何度も行った。台北の温泉も休憩タイムがありながら、水着着用で入る風情もいい。下呂温泉の橋の下の温泉もそうだった。「温泉」が「ONSEN」として世界にもっと伝わってゆくにはタトゥーや民族性、ジェンダーなどの問題がありそうだけれど、せめては忌憚なくあたたかいお湯に入って異言語で「同じような話題」や「居心地」を交わすのは良い気がする。腰が痛い、冷え性、和みたい、血流を良くしたい…なんでも。そういう他愛ないような健康を巡る課題こそが普遍的で、歌でそれらを解すのはまた違ってくる。
今でこそ、こういうのどかさで世俗の垢を落とせるように。
話題になっている布団ソングがあるならば、なお更にどこでも。タオルと、感性と憩いと。そして、すぐに春が来る。季節の変わり目に聴くくるりは、とても優しくあたたかい。彼らの新曲といってもずっとタイミングをはかって寝かせていたような「その線は水平線」が出るにあたって、その曲が生まれ出ていた頃の、2010年のアルバム『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』からのこの「温泉」を2018年に聴き直してみるとまた“気付き”があるのではないだろうか。
(※2020年4月10日に動画が削除されていることを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます)
(2018.3.10) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))