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カノエラナ『サンビョウカン』【現実を受け入れ無理難題の音楽業界をすり抜け泳ぐこと】

カノエラナ、musiplでは2年前にレビューを掲載していて、また取り上げたくなった。きっかけは、朝の子供番組『みいつけた!』で彼女の名前を見て。「カゲのオバケ」という歌の作詞作曲がカノエラナ。歌の中で女性の声は聴こえるものの、あれ、カノエラナってこんな声だっけと疑問。週に3回くらい流れたりして、その度毎に耳を傾けるのだけれど、違うよね、違うよねと。いくつかの記事では「カノエラナさんが歌ってる」と書いてあるのだけれども、違うよね、違うよねと、やっぱり疑問。で、公開されてた新曲のMVを見てみる。うん、やっぱり違うよ、声まったく違うじゃないか、あっちはウィスパーボイスだし、このサンビョウカンは曲の出だしから太い声でドドーンと歌い始めてて。違うよね、違うよね、何度も思うけれども、答えが出るわけではない。違うよねと思わせるその表現の幅というか、事務所がいろいろな方向での露出を図って『みいつけた!』で曲書けるようになったよ、でも番組の雰囲気からしてドーンという歌唱はちょっとねえ、みたいなことになって、それで「じゃあウィスパーボイスで歌えばいいんじゃないッスかね!」と言ったんだと思う、本人が。

音楽をやっている人はアーチスト性とかこだわりとかを強く主張することが多くて、いや、それがなければ音楽なんて出来やしないんだけれども、その理想と現実が上手くピッタリと一致するようなことは実は少なくて、だからそれにこだわることで良い話がポシャるということはたくさんあります。それは社会でも同じで、営業するならクライアントの多少の無理にも笑顔で頭を下げ文句を飲み込んで受注し、営業所に帰ってきたらそのクライアントの無理を受け入れたことを上司にぐちぐち言われてもまた笑顔を下げていなければやっていられません。そういうことに我慢ならなくなって辞表を叩き付けて独立して独立の苦労を味わうのも人生なら、クライアントと上司の無理難題を笑顔でやり過ごし、我慢に我慢を重ねながら出世していくというのも人生。カノエラナという人は、大抵のことは現実を受け入れ無理難題の音楽業界をすり抜け泳ぐことで、自分の中の芯のようなものを守ってきているのではないか、そういうアーチスト性なのではないだろうか。そうでなきゃ『たのしいバストの数え歌』とか『腹ペコのうた』なんてのを満面の笑顔で歌うことなんてできません。そしてそういう何でもアリなところが、彼女の魅力なんだろうと思います。

(2018.3.3) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl