Lucie,Too『Lucky』【シリアスな難題が積もるときほど、目の前に向かう表現行為はポップでいい】
ガールズ・ロック・バンドとして嫌みがないほどのストレートな抜け方と若さに満ちたサウンドで駆け抜けるChisa(Vo,Tg)、かなこ(Ba, Cho)、シバハラナホ(Dr, Cho)からなる3ピース。それぞれのバランスと不安定な良さがいい。どうにも根が拗れてしまわざるを得ない#METOOより、フィメールとしての佇まいを空気の中に活かし、歴史からのフィードバックの上で今現在と「あなた」について歌う衒いのない小気味よさ。細かく言うことがない、というほどによくできているから、初期のチャットモンチーではないような何かになってほしいとさえ思いながら、このまま行くのかどうか、変節の時期にサイケデリックに潜るのかどうかなど考えないほどに今のこの爽快性でいい。産毛に絡む、最後の予感を今は信じるだけで投函する心情はどこか向こう見ずで、始まったらどこかに放たれてそれさえも、幸運なのだと思う。歌詞の内容には一部、ジェンダーの問題が入り組みそうでも、こういう幸運を批判する磁場は無視していい気もする。シリアスな難題が積もるときほど、目の前に向かう表現行為はポップでいい。
(2018.2.23) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))