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ReN『Lights』【心の中でさまざまな葛藤をしていて、その一端のような何か】

昨年夏くらいから急激に名前が出てくるようになったシンガー、ReN。注目されるきっかけとなった楽曲でありアルバムタイトル曲の『LIFE SAVER』はギターのカッティングが鋭く刻まれていて、そのカッティングに合わせているのか歌に合わせたカッティングなのかはともかく、歌が刻まれるように放たれている。その歌い方も発音も全体が歌であり音楽であってとてもスタイリッシュ。それはそれで素晴らしいパフォーマンスだし、注目に値する。ただ、ただ、多くのアーチストを見てきて、そのスタイルに過度に依拠していくとアーチストのアーチスト性が単なるスタイルに小さく収まってしまうことが多々あるなあと思っていて、そういう観点から見れば、あの曲はそういうスタイルに底上げされているなあという印象が強かった。そのスタイルに惹かれたファンはそのスタイルにやがて飽きるし、ファンと同時かそのちょっと前に惹かれて表舞台に引き上げる業界人もファンの飽きと共に手を退いていく。そういった最初のきっかけを得るためにはスタイルというものは必須なのだが、そのスタイルにしがみつくこと無く、スタイルとは無縁な中身を煮詰めていくことが求められる。ReNというアーチストがそういう状況なのかどうかはわからない。だが、ほんの1ヶ月ほど前、『Aurora』という新曲を発表したのとほとんど同時に、彼のYouTubeチャンネルには2016年の曲がライブバージョンでアップされていた。『Aurora』の方は、スタイル的には『LIFE SAVER』の流れを継いでいるものの、多少そこから離れようとしている感があった。一方この『Lights』はそのスタイルとはまったく別の、シンプルなバラードだ。もちろん1人のアーチストの楽曲がすべて同じということはありえなくて、1曲のバラードがアップテンポの曲とはまったく異なるのは当然の話だ。しかし、この曲を聴けば、彼の内面にある中身的な何かが伝わってくるような気がするのだ。一方でアップテンポなスタイリッシュな新曲を発表し、一方でこういう楽曲のライブ動画を公開する。そこに、一面的に見てほしくないという彼の中の葛藤を感じる。いや、それはあくまでいちリスナーとしての想像にしか過ぎないのだけれども、どんなアーチストも心の中でさまざまな葛藤をしていて、その一端のような何かを、このライブ動画に感じられたのだ。

(2018.2.22) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl