Luby Sparks『Thursday』【綺麗な景色は山ほど誰か他人に任せてみればいい】
彼らも好きなバンドにあげ、影響下にある90年代後半のスーパーカーの持つ倦怠感と、マイブラ、ダイナソーJr.やライドなどの影が各所に芽吹きながら、どこか今の瀬でのシューゲイザー、ギターポップはロックやエレクトロニック・ミュージックのカウンターとして抗い、としてヒップホップやR&B、パンク・ミュージックへの叮嚀過ぎるほどの手続きのエレガンスが野暮ったく思えず受け止められる。スマートで即効的で逃避的で、なおかつ心地良いものは音楽のみならず、もっと世の中に溢れていて、世界中にアクセスできるのは部屋にいてもできる。綺麗な景色は山ほど誰か他人に任せてみればいいし、「じぶんでじぶんのかてになってゆくよ。」とはサンデーピープルの特権のような何かで、だからいい。
彼らもまだまだ大学生ながら、ある種の型がしっかりできあがっていて十二分に洗練されてもいるようで、でも、だからこそ今後は一波乱、二波乱ありそうな危うさもあって、つい気になってしまう。荒廃したセメタリーゲイツを通り抜けて、先のけもの道までをどんどん抜けてゆく程度の速度を保つのかどうか、適度な期待と。そしてまた、ロンドン・レコーディングでの共同プロデュースがマックス・ブルームというのも然もありなんで、どこか空間の歪みに個人的に10年ほど前、心斎橋のクアトロで観たケイジャン・ダンス・パーティの気配を懐かしく想い出したりもした。彼らのライヴもいつか、というより今の温度でこそ観てみたい気がする。スタイリッシュに壊れていける音楽がいつの時代も美しく儚く、今を切り取るだけに。
(2018.2.15) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))