GOOD ON THE REEL『モラトリアム』【演歌的な何かを感じさせる、2018年のロック】
良いな。少しばかり甲高い声がしゃくれるように歌う感じはamazarashiにも似た感じだが、あちらが尖った刃物のようなイメージなのに対してGOOD ON THE REELはやわらかい毛布のような印象がある。過去の曲もスピード重視とは対照的なミッドテンポの楽曲が多くて、それが彼らをまるで演歌のような泥臭さに仕立てている。いや、演歌じゃないだろ、演歌じゃねえよという罵声が飛んでくるのがわかる。もちろん演歌じゃないけれど、50年前の若者が演歌に求めていた何かというものが2018年の若者には存在しないのかというとそうではなくて、演歌的なものが埋める心のすきまが普遍的に変わらずある以上、いつの世であれ演歌的なエッセンスを持つ表現には存在意義がある。ロックは不良の音楽だと言われてた時代と、ロックがベースとして傍らにある時代と。演歌的なエッセンスが形を変えて活き続けているのだとすれば、2018年の演歌的表現というのは、こんな感じなのではないだろうか。淡々と歌われる彼らのモラトリアム。バブル時代以前のモラトリアムとは、社会に出る前の今の楽しさからいつまでも脱したくないというものだったが、今のモラトリアムとはもっと厳しい状態が常態になっている、そこから出たくとも出られないような、寒さの中の身動き停止のようなものなのかもしれないと思った。そんなことを言うとまた罵声が飛んでくるのかもしれないが。
(2018.2.2) (レビュアー:大島栄二)