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椎名林檎『人生は夢だらけ』【自由も夢も、囲い込まれることなく幅広い場所でのそれであってほしい】

個人的には椎名林檎はもう終わってると確信しているのだが、それでも時々こうして耳に留まって離れないような曲を作るから、それは僕の確信などが何の根拠もない的外れなものでしかないということを如実に示しているのだろう。この曲で歌われている「人生」とはなんだろうかと考えながら聴く。誰のものでもない自分自身の人生が夢だらけと高らかに歌う。全編を通して歌われているのがかなり女性としての乙女的な幸せのように感じる。「あの人」に愛してもらいたい。誰かを愛したい。私の自由。この人生は夢だらけ。それが往年のハリウッドミュージカル映画を思わせるような曲調とビデオ構成。ノスタルジックな過去の美徳に浸るのはいいのだが、そしてそれを自分の夢として規定するのもいいのだが、彼女ほどに影響力のある人がその価値観を高らかに歌い上げるということに、なにやら不気味なものを感じてしまう。もちろん彼女が自身の考える価値観や人生を表現することは自由だし、その結果のこの作品を価値観の故にどうこうというのは違うのかもしれないが、それ故に自分のそれとは相容れないというのも僕に許されている自由ではある。そして音楽という部分で抜きん出て秀でているから、その相容れない価値観が多くの人を影響していくエンジンとなっていくというのも、抗いきれない強さとして途方に暮れていく。海外では一流俳優たちが古い価値観に決別をするスピーチにスタンディングオベーションしている映像が喧伝されている2018年、日本で彼女は、そして彼女のファンはいったい何を感じたり想ったりしているのだろうか。

(2018.1.13) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二, 椎名林檎

Posted by musipl