Azami『カガミグサ』【美しく激しい新ジャンルとさえ感じられる】
冒頭からドラムの乱打。激しいサウンドにこのギターはメタルに違いないと思うが、違う。シャウトにはほど遠い綺麗な声が流れてきて、こういう組合せ面白いなと不思議な感慨に襲われる。そうかと思うとスクリーモが始まって、それまでの歌声の澄んだ印象と180度変わる。ではそれが違和感あるのかというとそんなことはまったくない。スクリーモの部分ではそれまで鳴っていた金属音に似たギターのフレーズが消え、ドラムの連打がサウンドの中心で全面に押し出されてくる。1曲を通してこのドラムが背骨の様に貫かれていて、そこを中心にいくつかの組合せで表情を変えながら展開していく。新しい音ではなく伝統を踏襲するような音を、組み合わせることによって新鮮味を生み出している。ややもすると新しい音を目指すあまり雑音にも似た音に迷いこむバンドが少なくない中で、澄んだ印象さえ与えるサウンドを表現しているこのバンドはとても良い。ただ激しいのではなく、美しく激しい新ジャンルとさえ感じられる。
(2018.1.9) (レビュアー:大島栄二)