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Ribet towns『メトロ』【自分の中に在るはずの想像の力を、この曲は思い起させてくれる】

アイリッシュな雰囲気のするギターのストロークがとても可愛くて、楽曲は終始祝祭の雰囲気に包まれているようだ。歌われているのは地下鉄に乗って人に会いに行く、その中での出来事がいくつか。ただの地下鉄なのに、地底人が出てきそうだなんてまた可愛らしい。今どき地下鉄のホームに向かって降りて行くだけでそんなメルヘンなことを考えることはなかなか難しい。地下鉄が最初に出来た時に初めて階段を降りていった人は、どんなことを考えたのだろうか。今となっては地下であっても戸外より明るいくらいに電気がついているが、昔はきっともっと暗かっただろう。ホームから車両が吸い込まれていくあの暗いトンネルの中にはいったい何が住んでいるのだろうかなんて考えただろうか。いや、今以上に最新の技術によってその地下空間は輝かしい場として認識されていたのではないかと思うし、だから、いつの時代であってもメルヘンな想像を可能にするのは、地下という場所の持つ力というよりは、可能性を広げる力を持つ人間の脳なのだ。その想像の力を、忘れてしまっていた自分の中に在る力を、この曲は思い起させてくれるようでとても嬉しい気分になる。MVで描かれているメトロの世界は、単に今のメトロでも古風なメトロでもなく、自動改札が完備されているのに切符にはハサミが入れられた硬券が登場する。この、今でもなく過去でもなく、つまりどこにもないけれどリアルな一端を持った表現というものが、僕らの現実感覚をちょっとずつ失わせて、結果的に妄想力を高めさせてくれるのだと思う。何も考えずに眺めるだけで楽しいし映像だし、何も考えずに聴くだけで嬉しいサウンドなんだけど、それだけではもったいないくらいいろんなものが詰まっているようで、こういうのが、出会って嬉しいという経験なんだろうなと改めて感じる。

(2017.11.23) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl